日本58.1・韓国58.5――なぜ二つの国の「心」はこんなに疲れているのか?ㅣ AXA Mind Health Report 2026から考える、私たちの心の現在地



私たちは今、以前よりもずっと「心の健康」について話すようになりました。

ストレス、孤独、バーンアウト、不安、人間関係の疲れ。

「つらいときは休んでもいい」

そんな言葉も、以前より自然に聞かれるようになりました。

ところが、2026年に発表された国際調査を見ていて、私は二つの数字の前で目が止まりました。

日本 58.1。
韓国 58.5。

AXAとIpsosによる2026年のMind Health Indexで、日本と韓国は調査対象18カ国の中で最も低い水準となりました。

なぜなのでしょう。

経済が発展し、教育や医療の環境も整っている二つの国で、なぜ人々の心はこれほど疲れているのでしょうか。




58.1という数字が意味するもの

まず、誤解してはいけないことがあります。

58.1は、日本の精神疾患の患者数や罹患率を示す数字ではありません。

AXAのMind Health Indexは、心理的・感情的・社会的なウェルビーイングに関わる複数の要素から、人々の心の状態を捉えようとする指標です。

したがって、

「日本は世界で最も精神疾患が多い国」

という意味ではありません。

正確には、

今回調査された18カ国の中で、日本のMind Health Indexが58.1と最も低く、韓国が58.5で続いた

という結果です。




18カ国を並べてみると見えてくること

今回の調査はAXAとIpsosが共同で実施し、2026年1月12日から2月16日まで、18カ国の18〜75歳、19,000人を対象に行われました。

順位国・地域Index
1タイ66.5
2スイス65.4
3中国63.8
4メキシコ63.5
4フィリピン63.5
6米国63.0
7フランス62.7
7香港62.7
9スペイン62.3
18カ国平均61.8
10ドイツ61.4
11トルコ60.7
12ベルギー60.4
12アイルランド60.4
14イタリア60.3
15ブラジル59.8
16英国59.5
17韓国58.5
18日本58.1

※ 数値が高いほど、AXA Mind Health Indexで測定されたウェルビーイングの状態が相対的に良好であることを示します。精神疾患の罹患率ランキングではありません。



この表を見ると、不思議なことに気づきます。

経済的に豊かな国だからといって、必ずしも心の健康指数まで高いわけではありません。

では、人の心を健やかにするものは何なのでしょうか。

所得でしょうか。

人とのつながりでしょうか。

仕事と休息のバランスでしょうか。

未来への安心感でしょうか。

おそらく心の健康は、一つの数字だけでは説明できない複雑なものなのでしょう。




問題は日本と韓国だけではありません

今回の報告でさらに重要なのは、世界全体の変化です。

回答者の46%が struggling または languishing の状態にあるとAXAは報告しています。

さらに、2021年から継続して調査されている16カ国のうち、10カ国がMind Health Index開始以来最低の結果となりました。

メンタルヘルスについて語ることは以前より増えた。

それなのに、実際のウェルビーイングは低下している。

これは、現代社会が抱える大きなパラドックスなのかもしれません。




最も疲れているのは若い世代

18〜34歳では、59%がstrugglingまたはlanguishingの状態でした。

世界全体より13ポイント高い結果です。

仕事。

住宅費。

将来への不安。

SNSで目に入る他人の人生。

人間関係。

終わることのない情報。

若い世代は、以前とは違う種類のプレッシャーの中で生きています。

一方で、この世代は自分の心の問題について話し、助けを求めることにも比較的オープンです。

最も苦しんでいる世代であると同時に、「つらい」と言うことを学び始めた世代なのかもしれません。



なぜ日本と韓国の心は疲れているのか

この調査だけで、その理由を断定することはできません。

それでも、二つの社会には考えてみたい共通点があります。

競争。

仕事への責任感。

経済や住居への不安。

周囲に迷惑をかけたくないという気持ち。

弱さを簡単には見せない文化。

そして、人の目を気にしながら生きる疲れ。

日本と韓国は違う社会です。

しかし、真面目に働き、我慢し、与えられた役割を果たすことを大切にしてきた点では、どこか似ています。

その勤勉さが両国の発展を支えてきた一方で、

私たちは長い間、

「大丈夫ではなくても、大丈夫なふりをすること」

を覚えてきたのではないでしょうか。

これはAXA調査が証明した因果関係ではありません。

この数字を見ながら、私たち自身の社会に問いかけてみたいことです。



つながっているのに、なぜ孤独なのか

AXAは、回答者のおよそ3分の2がスクリーン利用はメンタルヘルスに悪影響を与えると考えている一方、平日の仕事・学業時間を除いても平均5.1時間を画面の前で過ごしていると報告しています。

LINE、SNS、動画、ニュース。

私たちはいつでも誰かとつながれます。

しかし、

「つながっていること」と「心がつながっていること」は、同じではありません。

たくさんの人の近況を知っていても、本当につらい日に話せる人がいないこともあります。



このテーマについては、次回「デジタル休息」という視点から、もう少し深く考えてみたいと思います。




🌿 心にも、休む場所が必要です

社会全体を一人で変えることはできません。

でも、自分の心から届いている小さなサインに気づくことはできます。

眠れているだろうか。

人に会いすぎて疲れていないだろうか。

一日中、画面を見続けていないだろうか。

誰かの期待に応えるために、自分の気持ちを押し込めていないだろうか。

一人では抱えきれない問題を、長い間一人で抱えていないだろうか。

そして時には、

何もしないで休んでもいいのではないか。

心の健康は、大きなことから始めなくてもいいのかもしれません。

「最近の私は、本当に大丈夫だろうか。」

そう自分に問いかけることが、最初の一歩になることもあります。




☕ Plus Alpha

最初にこの報告を見たとき、私も日本58.1、韓国58.5という数字に目を奪われました。

しかし資料を読み進めるうちに、心に残ったのは順位ではありませんでした。

世界のさまざまな場所で、心の疲れを抱える人が増えているという事実でした。

必要なのは、

「なぜ私はこんなに弱いのだろう」と自分を責めることではなく、
「何が私たちをこれほど疲れさせているのだろう」と考えること

なのかもしれません。

体が疲れれば休む。

それと同じように、

心が疲れたときにも休んでいい。

そんな当たり前のことを、もっと自然に言える社会であってほしいと思います。

今日、あなたの心は元気ですか。




参考資料・調査について

本記事はAXAとIpsosによる「Mind Health Report 2026」を主な資料として作成しています。調査は2026年1月12日〜2月16日、18カ国の18〜75歳19,000人を対象に実施されました。国際的なウェルビーイングの傾向を見るうえで有用な調査ですが、医療診断や国別の精神疾患罹患率を示す統計ではありません。

AXA Mind Health Report 2026 公式資料
Ipsos 日本語版 AXAマインドヘルスレポート2026

ラベル: 健康 ウェルビーイング 心の健康




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