毎日歩いている。でも、それだけで十分?|脳を研究する医師が「歩くだけ」にしない理由

 歩くことは健康の基本。60代からは筋力・バランス、そして脳への刺激を少しプラスしてみませんか


毎日のウォーキングに筋力・バランス・脳への刺激を加える60代からの健康習慣

「健康のために何かしていますか?」

そう聞かれたら、

「毎日歩いています」

と答える人は多いのではないでしょうか。

私も、年齢を重ねるほど歩く習慣は大切にしたいと思っています。特別な道具はいりませんし、外を歩いて帰ってくると、体だけでなく頭まで少し軽くなったように感じることがあります。

そんななか、最近読んだ記事で興味深い人物に出会いました。

UCLAで精神医学の教授を務め、記憶障害やアルツハイマー病を長年研究してきた精神科医、ゲイリー・スモール(Gary Small)博士です。

脳と記憶を研究してきた博士自身も、毎日の生活でよく歩くそうです。

ところが――

歩くだけではありません。

ここが、とても気になりました。


脳を研究する医師は、なぜ「歩くだけ」にしないのか

スモール博士は妻と散歩をしたり、近くのレストランや用事にも歩いて出かけたりと、日常のなかで自然に歩く機会を増やしているそうです。

しかし、それだけではありません。

フィットネスバイクなどの有酸素運動に加えて、ダンベルやレジスタンスバンドを使った筋力トレーニングも行っています。とくに意識しているのが、下半身やお尻の筋肉、そしてバランス能力です。

なぜなのでしょう。

年齢を重ねた体に必要なのは、心肺機能だけではないからです。

歩くことは基本。
筋力とバランスは、その「歩ける生活」を長く支える力。

そう考えると、分かりやすいかもしれません。


ウォーキングに筋力運動とバランス運動を組み合わせる60代の健康づくり


65歳以上の人に対する身体活動のガイドラインでも、有酸素運動だけではなく、筋力トレーニングやバランスを意識した活動を組み合わせることが勧められています。


毎日歩いていても、脚の力は別に考えたい

「毎日30分も歩いているから大丈夫」

そう思いたくなりますよね。

ところが、ウォーキングと筋力トレーニングは、まったく同じ役割をするわけではありません。

平らな道をいつものペースで歩くだけでは、太ももやお尻などの筋肉に十分な負荷がかからない場合もあります。

だからといって、突然ジムで重いバーベルを持つ必要もありません。

椅子からゆっくり立ったり座ったりする。自分に合った軽い負荷で筋肉を使う。安全な場所でバランス能力も意識してみる。

「歩く+筋力+バランス」

60代からは、この組み合わせを覚えておいてもよさそうです。


60代からのウォーキング・筋力運動・バランス運動を分かりやすく示した健康インフォグラフィック


筋力やバランスを保つ意味は、単に筋肉をつけることだけではありません。

自分の足で出かける。買い物をする。会いたい人に会いに行く。

そんな自分らしい日常を長く続けるための力にもつながっていきます。


では、運動は認知症やアルツハイマー病にも関係する?

ここが気になる方も多いでしょう。

「運動をすれば、認知症を予防できるの?」

この問いには、少し慎重に答える必要があります。

特定の運動をすればアルツハイマー病や認知症を確実に防げる、という意味ではありません。

年齢や遺伝など、自分では変えられない要因もあります。

一方で、身体活動を含む生活習慣や、高血圧・肥満などの変えることのできるリスク要因に目を向けることは、認知機能低下や認知症のリスクを考えるうえで重要です。

身体活動は、私たち自身で見直すことのできる生活習慣の一つ。

だからこそ「予防できるか、できないか」という二択ではなく、将来のリスクを少しでも減らすために、今できることと考えてみたいところです。

つまり、

「この運動をすれば認知症にならない」ではなく、
「脳の健康を守る生活習慣を積み重ねていく」

という考え方です。

長年、記憶やアルツハイマー病を研究してきたスモール博士が、特別な健康法ではなく、歩く・筋肉を使う・バランスを保つといった基本を日常に取り入れていることも印象に残ります。


最近注目したい「運動+α」という考え方

さらに興味深い研究があります。

認知症のない60歳以上を対象とした227件の研究をまとめたシステマティックレビューでは、運動そのものが実行機能、記憶、情報処理速度などに良い影響を示しました。

さらに、運動に認知トレーニングなどを組み合わせた「Exercise-Plus」では、一部の認知領域で追加的なメリットも見られています。

ただし、

「歩きながら頭を使えば認知症を防げる」

と単純化することはできません。

私が面白いと感じたのは、もっと大きな方向性です。

体を動かすだけで終わらず、脳も使い続ける。


運動に新しい刺激や会話・学びを加えて体と脳を使う60代からの健康習慣

たとえば、いつもと違う道を歩いてみる。

散歩から帰ったら、少し筋肉を使ってみる。

友人と歩きながら会話を楽しむ。

新しい料理や趣味、言葉を覚えてみる。

健康のためだからといって、毎日の生活をトレーニングメニューで埋め尽くす必要はありません。

むしろ、日常のなかに小さな刺激を増やしていく。

そのほうが無理なく続けられるのではないでしょうか。


Plus Alpha|「もっと歩く」より、「少し足してみる」

年齢を重ねるほど、健康について私が大切だと思うのは、

「何が一番いいのか」より、「何なら続けられるのか」

ということです。

すでに毎日歩いているなら、それはとてもいい土台です。

やめる必要などありません。

そこに週に何度か筋肉を使う時間をつくり、バランスを意識する。そして、ときには知らない道を歩いたり、人と話したり、新しいことを覚えてみる。

歩く + 筋力 + バランス + 脳への刺激。

派手な健康法ではありません。

でも、60代からの健康づくりには、こうした小さな「+α」の積み重ねこそ大切なのかもしれません。

歩くことは、ゴールではなくスタート。

明日の散歩では、いつもの道を少し変えてみる。帰ったら椅子からゆっくり立ち上がる運動を数回してみる。

そんな小さな**「+α」からで十分です。**


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▶ 50代からの健康とウェルビーイング|睡眠・歩く習慣・心を整える暮らし方

睡眠、歩く習慣、心の整え方から、50代以降の健康を考えるFor You Plus Alphaの健康ガイドです。

https://www.foryouplusalpha.com/2026/09/50.html


参考資料

Business Insider Japan|UCLA教授が実践する「脳を健やかに保つ4つの習慣」
WHO|認知機能低下・認知症のリスク低減に関するガイドライン
CDC|Older Adult Activity: An Overview
60歳以上を対象としたExercise-Plusのシステマティックレビュー・メタ分析

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